『反恋愛主義』と『君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956』

もうすぐ『反恋愛主義』が公開されます。
『反恋愛主義』は日本でつけられた邦題で、原題は『Just Sex And Nothing Else』。
その原題の示す通り、「セックスだけ、それ以上はお断りよん」という女性のお話。
セックス狂女の過激な内容かと思いきや、下品に成り過ぎない良質のラブ・コメディでした。
主人公のドラは32歳の独身女性、おまけに恋人には子供までいる既婚者だということが発覚。
もう、男には期待ぜず独りで生きていくのもアリかと思うけど子供は欲しい・・・
そこでドラは「恋愛」ではなく「セックス=精子」だけの関係を求めるが、、、
どこの国にもアナザー『Sex And The City』のストーリーはいくらでも転がっているということだよね。
本作は、あまり日本では馴染みのないハンガリー映画なんだけど、
ニューヨークを舞台にしたアメリカ映画のようにスタイリッシュになりすぎず、
パリを舞台にしたフランス映画のようにスノッブでもない。
適度に都会的でありながらのんびりとしたヨーロッパの雰囲気がヌルくて心地よいのだ。
ドラ演じるユーディト・シェルは美人だけど近寄りがたい感じではなく、
適齢期の女性の揺れる心理をユーモラスに、そしてポジティブに演じきっています。
その美人だから当然モテないわけではないドラが「恋愛」と「セックス」の間で揺れ動く顛末はお約束な展開だけど、
ユニークな脇役のキャラクターにも支えられ、飽きの来ない仕上がりです。
本国ハンガリーでは、国民の20人に1人が観賞したというから、
その爽快感溢れる後味は保証済み。
ラストでドラが自分の気持ちをアピールするために歌う「〜○〜×〜△〜ホゾ」という歌謡曲みたいなフレーズが
うっかり頭にこびり付いて離れないんだけど・・・観ればわかるよ、きっと(笑)。
エンドロールでうっかりNG集をやってしまうあたり、
B級ラブ・コメのルールをしっかり守ってます〜

そして、この『反恋愛主義』の監督は何と『君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956』の女流監督であるクリスティナ・ゴダ。
『君の涙』は、かつて「ハンガリー動乱」として知られた失われた革命と、
その数週間後に行われたハンガリーソ連水球の試合「メルボルンの流血戦」という歴史的事実から生まれた感動的な物語。
社会的な要素と青春映画の高揚感が見事に相まって、涙せずにはいられません。
そんな『ケン・ローチ』みたいな硬派な映画を撮った監督と軟派なラブ・コメである『反恋愛主義』の監督が同一人物というのだから驚き。
今回公開となる『反恋愛主義』は、実は『君の涙』よりも前の作品で、
ゴダ監督初の長編劇映画として華々しくデビューを飾っていたのだ。
なので、1作目の『反恋愛主義』に出ている俳優カタ・ドボー、シャーンドル・チャンニが2作目の『君の涙』にも出ています。
2006年興行収入では、『君の涙』がハンガリー映画史上で公開第1週目の最高動員数を勝ち取り、2006年興行収入1位を獲得するだけでなく、
先に公開されていた『反恋愛主義』を2位に食い込ませ、
1位2位をゴダ作品で独占する快挙を成し遂げたというのだからさらに驚き。